springsnow
幸福熱源
俺の指先がその襟元に触れても、古泉は何も言わない。何の反応も示さない。
視線さえも動かさず、これから始まる出来事に何の意味も見出してないことを示すかのように、ただ、何時もよりほんの少し目を細めているだけだ。
二人きりの部室の中、俺が古泉のボタンを外しネクタイを引く、軽いとしか言いようがない小さな音が聞こえてくるだけだ。
甘い言葉は無い。微かに熱を帯びる息づかいすら、生理的な反応以上の意味を持たない。
例えば、俺が古泉の中心を暴きだし、それを舐めあげてどうなるかなんてことも、……性の仕組み以上の何かが必要なことじゃない。
目を合わせても古泉は笑わない。こういうとき、こいつは絶対に何時もの笑顔を見せない。
時折、憐れみだとか怒りだとか嫌悪だとか……、そんな、普段だったら絶対にのぞかせないような感情を垣間見せるだけだ。
そういう表情が見たいわけじゃないのに。
「ん……」
自分で広げて、なんてことも、最近ではもう慣れてきた。
羞恥心は捨てきれないはずなのに、そんなことよりも、繋がっていたかった。
古泉が何もしないなら、でも、何もしない代わりにここから逃げないなら、嫌いだと言いながらも俺を抱くことが出来るというのなら、俺はこうして、この関係を求め続けるのだろう。
硬いものを中に導くときの痛みは、強引にねじふせてしまう。
……そして、その先のことを思う。
「馬鹿じゃないですか」
何度聞いたか分からない台詞も、熱の中では蜜言と同じ意味を持つ。
それを、こいつは分かっているんだろうか。
「……本当に、あなたは、」
そこから先の言葉は聞かない、聞こえない。
痛みを上回る快楽を自分の身体の中に押しつけながら、俺はただ古泉を求める。
何度、その名前を呼んだだろう。
答えが返ってくるのは呼んだ回数よりずっと少なくて、それは罵倒の言葉混じりだというのに、俺はその言葉を手放せない。
古泉が、俺のことを見ている。繋がっているという事実を拒否しない。そして、古泉も確かに快楽を感じている。
……それだけで、俺は幸福なのだと実感する。
絵茶より、のっかり受けキョン(070712)