エネマ、続き?





「ん……」
 本当は、自分の状況を把握したくない。
 でも、把握しないまま身体の中をかけ昇っていく感覚に身を委ねることなんて出来ないから、目を閉じることも出来ない。
 感覚を逃がすように身体を動かそうとしてもこの渦のような快楽の中ではそれも叶わないし、何とか脚を少しだけ動かしてみても、それが自分の感覚として帰って来ない。全てが、身体の中に埋め込まれた器具を中心とする部分に攫われていく。
「やあっ……、だ、ダメ……」
 電源で動いているわけでもない、ただ、そこに有るだけの物体に、何で、こんな……。ああ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
 どうして、こんなことになっているんだよ。
 ああ、犯されるかと思ったさ、そんなのは嫌だとも思ったさ。でも、これだったら犯された方がまだマシかも知れない。それなら、どんな相手だろうと人は人だし、仕組みってものが分からないわけでもないからな。恐怖は有っても知識が有るならば、また違った覚悟の仕方も有っただろうさ。
 けど、俺には今の状況がさっぱり分らない。
 中を刺激されれば反応するものらしい、ということは知っていたけれども、こんな妙な物体は知らない。……本当に、なんなんだよ、これ。
「気持ちよさそうだなあ、ああ」
 誰かの声が聞こえる。誰か、としか言いようがないのは、それが一体どんな理由で居る人物だかさっぱり分らないからだ。そしてその声が妙に耳の中で響くのは、きっと、俺がこんなおかしな状態に居るからなのだろう。
「抜い、て……」
 意味のある言葉を紡げたかどうかは、自分でもよく分らない。でも、言いたいことは通じていると思う、叶えられるとは思えないけれども。
「へ、暫くそうしてろよ」
「ひぃっ……」
 声が出たのは突き放すような言葉のせいじゃなくて、一際大きな波が身体を襲ってきたからだ。こうなると、もう、何を言われても分からない。
 どうして自分がこんな状況に陥ったのかなんてことさえも思いだせないまま、俺はただ脚を震わせ、襲い来る快楽に従うしかなかった。


 
 (07)