キョンちゃんと一樹くん、6


 

 トップバスト83ってことは、よほどのことがない限りМサイズで大丈夫だろうと判断し、俺は選んでいた服のサイズを全てМにして注文し、ついでにブラジャーも幾つか頼んで通販での注文を済ませた。
 これで、明日にはまともに着られる服が届くはずだ。
 そうしたら外に出られるな。あんまり知り合いに会いたくないから近辺は勘弁したいところだけども。
「……腹減ったな」
 時計を見上げると、時刻はすでに二時を回っていた。
 何時の間に、と思ったが、ばたばたしている間に時間が過ぎたんだろう。
「お昼、どうしますか」
 いつの間にか復活していたエスパー少年が、座っている俺の正面から話しかけてくる。わざわざ後から覗きこもうとしたのに途中で角度的にヤバいと思って回り込んでくるあたりが何とも言えない。
 俺は別に気にしないぞ。
「んー、冷蔵庫に何か有るか?」
「大したものは有りませんね」
「一応見せろ」
 ノートパソコンをテーブルの上に置いて、キッチンへと向かう。
 遠慮なしに開いてみた冷蔵庫の中身は、古泉の言葉通りの状態だった。有るのは冷凍食品が少しと調味料、カップのアイスクリーム等々、はっきり言ってまともに自炊している人間がいる家の冷蔵庫じゃないな。
「お前、自分で作って食ったりしないのか?」
「外食が多いですし、一人の時は適当な物で済ませてしまいますね」
「お前なあ……」
 前々からそんな気はしていたんだが、こいつはどうやら自分の食事については結構無頓着な方のようだ。
「料理が全く出来ないわけではないんですが、一人分を作るのもめんどうですし」
 こういうところも、本当にこいつらしいと思うよ。
 何時も隙なく振る舞っているようなのに、実は結構穴だらけというか、完璧には遠いというか……、ま、高校生ならそっちの方が正常かもな。
 高校生の一人暮らし自体そう多くないだろうが、その中でも、朝も夜もきっちりまともなものを作って暮らしているって方が少数派だろうし。
「今日はどうする? 昼飯だけでも、ここに有る分じゃ足りないだろ。……出前でも取るか?」
 買い物、という手も有るには有るが、古泉を一人で行かせるのは忍びない。今日は既に一度別の用件で一度買いものに出てもらっているしな。服装の問題が有るから、俺が行くってのは却下だ。
 そう考えると、出前ってのが妥当な線だろう。
「そうしましょうか」
「んじゃ、適当に頼むか。ネットで注文すればいいよな」
 今はネットで何でも注文できる。便利な時代だ。
「あ、はい」
 支払は古泉持ちのはずなんだが、なんでここで主導権を握ろうとか思わないかな。
 こっちの好きなものを食べていいって言うなら、それはそれでかまわないけどさ。
「お前、食いたいものとか有るか?」
「何でも良いですよ」
「じゃあ、特上寿司な」
「えっ」
「バカ、昼間からそんなもの食わないって。……俺はかつ丼」
 他人の払いで美味いもんを食うってのは良いものだが、この生活が一週間続くことを考えると、初日から重い物はちとパスだな。
 元の身体と体格が違う以上食事面で無茶は出来ないし、かといって減らし過ぎたらそれはそれでどうなるか分らないっていう心配もあるしな。
 長門の情報操作辺りに頼ればどうにかなるのかも知れないが、その辺は最終手段ということにしておきたい。
「……僕も同じもので」
「了解」
 本当はほかに食べたい物が有ったんじゃ? という気もしたが、どうせ聞いても答えなど帰って来ないことは分かり切っているので、俺はかつ丼二つで注文を確定しエンターキーを押した。

 
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