女体化+69




「や、ちょ……」
 寄りかかっていた身体を軽く持ち上げられ、逆向きにさせられる。
 ちょうど古泉の股間が目の前に来る体勢……、いわゆる69ってやつか。ぼんやりした頭のどこかが冷静に告げるけれども、目の前にある物を見ているとそうも言ってられないような気がする。この体勢ってことは、何を要求されるかなんてのは決まっているわけで。
「ん……」
 要求されるよりも前に、太もものあたりを舐めあげられた。尻を持ち上げられる態勢で、そのまま舌が秘所へと向かっていくのが分かる。秘所、という時点でお分かりいただけるかもしれないが、今、俺の身体は女のものになっている。
 ……何でとか聴くな、答えられたら苦労しないって言うか答えが分かってないわけじゃないが、世の中には言いたくないことも有るんだよ。認めたくない、なんてことを今更言うつもりはないけどさ。
 ああ、それにしても……、この感覚は、どう言ったらいいんだろうね。舐めあげられるたびに震えるのはその部分だけじゃなくて、身体の奥が熱くなっていくような気がする。男の身体の時には無かった感覚だ。男の性的な快楽は身体の一部だけで感じる物だけれど、女のそれは身体全体だってのは本当なんだな。なんか、まだ身体がそれについていける気がしないけどさ。
「あなたもやってくださいよ」
 不意に舌先の動きが止まったと思ったら、古泉が悪戯っぽさの混じる声で言ってきた。声が後から聞こえるのに古泉のそれが自分の目の前にあるってのも変な感じだ。そういや、この体勢だと胸を古泉の身体に押し付けていることになるんだよな。さて、古泉は布越しのそれをどう思っているのかね。結構いい形と大きさだと思うんだが。
「……分かったよ」
 羞恥や躊躇いが無いわけじゃないが、ここで断るほど我儘で居るつもりもない。何度かやったこととは有るわけだし……、しかし、この体勢だとちょっとやり辛いな。
 あー、自分の方があれこれされているからってのも有るんだろうが、角度の問題かね。舐めあげるのも口に含むのも、って、舌を中に突っ込むなあ!!
「けほっ。……ば、ばか」
 浅く咥えていたものから口を離し、身体を少し捻って抗議の声をあげてみるけれども、古泉は笑っているだけだった。ああ、ムカつくな。
「気持ち良かったんでしょう?」
「ひゃっ」
 って、指を入れるなああ!!!
 指とか舌とか……、なんてーか、なんだ、その、慣れてますって言わんばかりの動き方は。
 ねっとり、とでも表現するべきなのか……、実際はその、唾液だって愛液とやらだって、そんなにべたべたしたもんでもないような気がするんだが。
「あ、あぁ……」
 中を探るような古泉の長い舌の動きに反応して、勝手に背中が揺れる。自重に潰されているような胸の中心、その乳首が古泉の服に擦れるだけでも気持ち良いのだということを思い知らされる。
 舌の動きだって、それ一つじゃそんなに強い刺激じゃないんだ。ただ、重ねられたそれがどんどんと熱を煽っていくと、どうしたらいいか分らなくなってくる。
 古泉が、こっちも舐めろとか言って来ないのが幸いなのか……、というか、この状況で口に含んだりしたら、絶対噛むって。時折お義理程度に舐めあげてみるけれども、意味が有るとは到底思えない。古泉の物は固いままだし、俺にしている行為の方に興奮しているんだろうってのは分かるんだけどさ。
 なんか、その、これは……、なあ。
「あとでしてくださればそれでいいですよ」
 うわ、言われたし。
 実際に言われるとムカつくな。ここで、自分はされるだけで良いやと思えたら良いんだろうが、それはなんか悔しいわけで……、うん、我ながら損な性分だと思うが、そう思うんだから仕方ないじゃないか。
 とはいえ……、どうしようもないくらい気持良いのは確かだ。
「ん……」
 声を出すのが恥ずかしくて抑えようとするけれども、どうしても唇の端から音は漏れる。古泉がずっと俺の脚の間に埋めているからそこから声が聞こえてくることは無いが、水音は耳に届く。下手すると、声で色々攻め立てれるよりこっちのがキツイかも知れない。
 古泉も、それを分かってやっているんだろうか。……奴なら、それも有り得そうだよな。
 全部分かっていて、なんてことは無いと思いたいんだが……、ああ、ダメだ。考えるには材料が足りないし今は頭も回らない。
 ここは、素直に……、っていうと癪なんだが、快楽の波とやらに身を委ねてしまった方が良いのかもな。
 本当、癪だけどな!



 
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