キョンちゃんと一樹くん、こぼれ話3




 女の身体の仕組みってのはどういう風に出来ているんだろうね。
 どー考えても本意では無いはずの状況に、触られまくって感じるなんて……、いやいやいや、これは生理的な反応みたいなものだ。
 だってほら、男の身体より女の身体の方が感じやすいって言うじゃないか!
 うん、そう、そういうこと。そういう結論でオールオッケー。何の問題もないじゃないか。
「……今日のあなたは特別かわいいと思いますけど、普段は普段で充分かわいいですよ?」
 いきなり気持ち悪いことを言いだすんじゃない。
「んっ」
 って反論したいのに、俺の口から洩れるのは形容し難い声とも言いづらい息遣いだけだ。
 乳首を掴むな脇腹を撫でるな、その手を脇の下に移動させるな!!
 ええい、お前の手つきは一々ねちっこいんだよ。その癖こっちが止める前に次のところへ移動しやがって。中途半端なのかやりたい放題なのかどっちにしろ。
 じれったいのが一番あれなんだよ。
 ……あれってなんだってツッコミは受け付けないからな。あれはあれだ。
「何時もより感度がよろしいようで」
「当たり前だっ。はううっ」
 うなじを撫でるな。ていうかなんだその髪の毛をかきあげるような仕草は。
 確かに今の俺は男の時より若干髪が長いわけだが……。
「……元に戻っても、髪、伸ばしてみませんか?」
「却下だ却下、面倒くさい」
「残念ですねえ」
 髪を撫でるな。鬱陶しいしくすぐったい。
 手で梳くようにって……、くそ、結構気持良いとか思いそうになる自分が嫌だ。
 自分の髪をどうこうしようとは思わないが、男が長い髪の女が好きな理由とか、女の子が髪をとくのが好きな理由とかは、ちょっと……、ちょっとだが、分からんでもないような気がするな。
「ふあ……」
 髪に触れていた手が、首筋から背中を下っていく。
 ゆっくりと触れるか触れないかくらいの位置で背骨をなぞる指先が、少しずつ熱を高めていく。
 ……嫌、では無いんだろう、という自分を実感してしまう。
 何時もより、という比較はさておいて、今は女の身体だから、受け入れることを前提とした作りの身体を持っている分、普段より多少緩くなっている部分は有るのだろう。
 余り認めたくないことでは有るが、これが一時的な変化のせいってことに出来るなら、それでも良いか。
 尾てい骨の辺りを軽くまさぐっていた指が一旦身体を離れ、再度近づいて来たと思ったら、肩を掴まれそっとシーツの海の中に仰向けに沈められた。
 視線の先で、古泉が楽しそうに笑っている。
 何だろうね、こいつの笑顔ってのは……、何か、妙に納得させられちまうんだよな。
 いやらしいようでいて、一方的なようでいて……、そのくせ、こいつはどこまでも無邪気だ。
 子供みたいだ。
 ……そう思ったら、腹も立たないって理屈なのかな? その辺、良く分んないし分かりたくもないけど。
「来いよ」
 珍しくためらっている様子の古泉に、こちらから手を伸ばす。
 出血大サービスも良いところだね。
「……かわいいひとだ」
 何度聞いたかな、その台詞。
 まあ、今は否定しないでおいてやる。
 今だけ、だけどな。
 

 
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