女体化+触手




 ん……。ちょ、やめ。やめろ、って、言っても、そもそも聴いてもらえない以前に聴くって言う器官が有るかどうかすら分かんないけどさ。
 ああ、もう、何なんだよ……。
「ふぁ……」
 だー、なんでこんな声出しているんだよ俺!
 自分の声に聞こえないのが救いと言えば救いかも知れないが、こんな声が自分の口から出ているってのは絶望的な気持ちになりそうだね。なんだよこの、高い声は。
 明らかに男のものじゃない声が出てくるこの身体は、当然のように身体ごと別のものに作り変えられてしまっている。当然、と認識するのはおかしいと思うんだが、不可思議体験を繰り返してきてしまった俺は、今この状況を現実として受け止めてしまうくらいの素地はできていた。
 ……はっきり言って全然嬉しくない。こんなこと、夢とか幻だと思ってしまうか、いっそ、このまま意識や記憶ごとどこかに飛んで行ってしまえば良いのに。
「あ、ああ……。やぁっ」
 いや、と口にしながらも、それは相手側の熱を煽る結果に終わるだけじゃないのかと頭の冷静な部分が告げているが、さっきも言ったが、そもそもその相手側とやらにまともな聴覚が有るかどうかすら疑わしい。
 何せ人間じゃない。長門や朝倉のような宇宙人ですらない。そもそも人型をしていない。
 ……動物じゃないし植物でも無いし無機物ってわけでもないだろうが、あえてどれと分類するならば植物的な代物だ。食用植物ってのを思い浮かべてもらえると一番分かりやすいかも知れない。
 形状はもちろんだが、意味合いとして。
 その、植物モドキに俺が何をされているかというと……、まあ、食べられそうになっているってことになるのかね。もちろん、言葉通りの意味じゃない方だ。
「うぅ……」
 頭の片隅が冷静で居てくれるのは、きっとこの状態が非現実的過ぎるからだろう。
 でも、そんな精神状態とは無関係に、俺の身体はこのおかしな植物モドキどもに好き勝手にされていく。体中を絡めとっていた太い蔦のようなものが、俺の脚を開かせていこうとしている。一応抵抗を試みてはみるものの、人間の力ではかなう気がしない。この化け物め。って、化け物か。
 っていうか本当、何なんだよ。明らかに植物みたいな、どこにどうやって力が込められているかさっぱり分らないような物体の癖に、なんでそんなに力が有るんだよ。ああ、もう……。
 そんな風に抗議しようと思ってみても、顔の辺りにも蔦が張っているからか上手く言葉にならないし、ぬめぬめとした身体を這う蔦や、背中を撫でる太い蔦が、俺の思考を侵食していく。触られているだけなのに。……蔦についた液体に何か有るのか? いや、それとも、触られるだけでも感じるのが女の身体ってやつなんだろうか。
「ひぃっ……」
 無理矢理開かされた脚の間に、太い蔦が突き付けられる。
 何をされるかなんて選択肢はたった一つしかなくて、それが避けられない以上覚悟を決めるしかないのだと思うが、恐怖が軽くそれを上回る。無理無理無理。覚悟とかそういう問題じゃないから。怖い、なんてことを思ってそれを受け止めようと思えるうちはまだマシなのかも知れない。
 無理、絶対無理。
「あ――――」
 声が、声にならない。
 慣らされることもないまま入って来た物体が、まるで内側から身体を裂いていくかのようだ。こんな衝撃は知らない、こんな痛みは知らない。……知りたくなかった。
「い、あ、や……」
 意味の無い一音だけの声が漏れて行くけれども、それが植物モドキの動きを鈍らせることはない。相手は人間じゃない。これは聞く耳以前の問題だ。
 どうすれば、良い。
 どうしたら、良い。
 薄れながらもどこかで熱を持ち始めた意識が、思考の邪魔だ。考えたってどうにもならないことは分かっている。俺は無力だ。でも、こんな……、こんな、セックスと呼べるかどうかも分からない事態に思考をさらわれっぱなしだなんて……。
 
 
 




 
 (07)